ZARDOZ NOTWAXはデュポン社が開発したフッ素系潤滑剤、クライトックス(Krytox)をベースに開発された100%液体フッ素樹脂ワックスで、一般的には春先など湿った雪での滑走時にホットワックスの上に塗るトップワックスという位置付けかと思います。
しかし、湿度の少ない低温時の雪では逆に滑りが悪くなったり、湿度の高い雪で使用してもすぐに効果がなくなったりと、使い勝手の悪さで使用を敬遠されてる方も多いのではないでしょうか?
そこで今回紹介するのは、それらNOTWAXの欠点を補う「フィリックス・プロセス」という方法です。
これはNOTWAXの説明書にも載っている方法なのですが、ホットワックスの前にNOTWAXを塗ると言う一般的な使用方法とまったく逆の使い方であるため、実践されている方も少なく方法自体知らないという方も多いかと思います。
この方法は雪質を問わず高温・低温どちらもよく滑るそうで、あくまで私が実践した感想なのですが、NOTWAXには不向きとされている低温下でも、通常の低温用ワックスをかけた板より走る感覚を実感しました。
では早速手順を解説していきますが、まず滑走面の汚れや余計なワックス類をリムーバーで落とします。クリーニング用の柔らかいホットワックスをかけてすぐ剥がす方法でもよいのですが、ワックスの剥がし残しがあると次の手順にさしつかえるので、その場合はよーくワックスを剥がしてください。私はスクレーパーでワックスが出なくなった後、ブロンズブラシとナイロンブラシを併用して落としました。目の粗いフィニッシュマットでも良いかと思います。
次にNOTWAXを塗ります。そしてここが重要なのですが、塗ったら滑走面を上にして一晩置きます。こうする事でNOTWAXが滑走面に浸透します。一般的にパラフィンと違いフッ素は滑走面に浸透しないと言われていますが、液状のフッ素樹脂であるNOTWAXはわずかですが滑走面に浸透します。この時ワックスの残りが滑走面に多くあると上手く浸透していかないので、前の工程でワックスはしっかり落として下さい。
一晩置いたら再びNOTWAXを塗るのが正規の手順ですが、私的には滑走面にNOTWAXが浸透していればあまり必要ないかなと思います。
そして通常のホットワックスをかけるわけですが、ポイントとしてアイロンはゆっくりめに動かし滑走面にしっかりワックスをなじませてやる事です。NOTWAXが塗られているとフッ素の特性上、どうしてもワックスが弾かれ易くなるのですが(冷えた皿へ溶かしたチョコレートを垂らした時のように、冷えて固まったワックスがかんたんに剥がれてしまう)、ワックスをしっかり液状にさせることで滑走面になじみます。ちなみにこの時滑走面に浸透していないNOTWAXがホットワックスの表面ににじみ出てきます。
使用するのはフッ素を含まない純パラフィンワックスでも良いかと思いますが、この方法だと前述のとおり通常よりゆっくり目でアイロンをかけないと滑走面にワックスがなじまず、融点の高い硬めのワックスだとアイロンの温度も高くなり滑走面を焼いてしまう危険性が少なからず出てきます。反面融点の低い柔らかいワックスだと比較的なじませやすいですが、ワックスが持ちませんし低温での雪に対応しません。ワックスの硬さは作業のしやすい範囲でなるべく硬いものが良いかと思います。ちなみに私はガリウムのハイブリッドベースかSSシリーズの緑を使っています。
ワックスが冷えたらスクレーパーで削ぎ落とします。これは通常のホットワックスと同じです。
そして通常であればブラシがけとなるのですが、この方法ではスクレーパーでワックスを削ぎ落としたところで終了となります。通常のホットワクシングと違うので戸惑う所ですが、特に湿った雪での滑走に有効なのだそうです。ですが乾燥した低温時の雪質でもよく滑りました。ただスクレーパーで剥がす際に、剥がし残しが無いようにはしたほうが良いかと思います。私はブラシはかけませんでしたが、ちょっと気になったので最後に目の細かいフィニッシュマットで磨いて仕上げとしました。
低温下ではそのまま滑走し、湿度の高い雪質ではトップにNOTWAXを塗って滑走します。
私はFish(シンタードベース)とFLATKING(カーボングラファイトベース)で実施し、それぞれ-14℃の気温(曇りだったので雪温もほぼ同じかと思われる)のもと乗ってみました。驚いたのは通常の低温ワックスと比較して、緩い斜面での加速感の違いです。それは圧雪・新雪問わずで、緩い斜面での加速があまりに良いため、前の人と感覚をあけて滑っていたつもりがすぐに追いつく…といった具合でした。ちなみにシンタードベースよりグラファイトベースでのほうが、通常ワックスとの違いがはっきり出ているような感じがしました。
ホントに滑るのか不安になりますが、ホントによーく滑るので一度おためしあれ。