北海道ではここ数年でヒグマ出没件数が急増し、これまで起きていた郊外や山岳地帯での被害のみならず市街地での目撃・被害も急増しています。札幌では2021年6月に住宅地に現れたヒグマが男女4人を襲う事件も発生しています。
生まれも育ちも北海道の私は「ヒグマは冬は冬眠するもの」という認識でしたが、真冬の北海道のスキー場でヒグマに遭遇する…そんな時代が来るかもしれません。
スキー場での野生動物遭遇事例
アメリカ・ユタ州で今月4日、バックカントリー中にピューマに襲われた男性がスノーボードで撃退したというニュースがありました。この男性はスノーボードの板を飛びかかってきたピューマに叩きつけて追い払い、無事に避難することができたそうですが、バックカントリー中とはいえ遭遇したのは未開の冬山などではなく、ビーバーマウンテンというスキーリゾートのエリア外でした。
昨年11月には、ルーマニアのスキー場内でヒグマが出没したというニュースもありました。これは日本でも報道され、インストラクターの男性をどこまでも追いかけるヒグマの映像が衝撃的なニュースでした。(その後ヒグマは山奥に逃げて死傷者は無し)
このように海外のスキー場では野生動物との遭遇がたびたびニュースになっていますが、日本のスキー場でも2020年12月に北海道美唄市の美唄国際スキー場にて、リフトに乗っていた客がコースを横断するヒグマの親子を目撃し、利用客約80人が避難する騒ぎがありました。
スキー場にクマ、80人避難 北海道美唄市、けが人なし
https://www.sankei.com/article/20201213-YCQOZ24FIVNRFNDKJYTFVPHPVE/
スノーボードシーズン中でもヒグマが出没する可能性
ヒグマは一般的に冬に冬眠を行いますが、食べ物や気候条件などにより、冬眠しないヒグマが存在することが報告されています。そのため、真冬でもヒグマが目撃・捕獲されるという事例は少なくありません。
前述の美唄国際スキー場でのヒグマ目撃は12月でしたが、これはこの年の降雪量が少ない傾向にあったため、ヒグマの食料となるドングリを掘り起こして食べる事が出来たからではないかと言われています。道東でも翌1月に目撃が相次ぐなど冬季のヒグマの目撃が多いシーズンでした。
過去にはエゾシカを冬に捕食しながら冬眠をしなかったという個体も確認されています。エゾシカの生息数増加はヒグマと同様問題となっており、今後冬眠しないヒグマの増加原因の一つになるかもしれません。
逆に冬眠前に食料が不足していても栄養不足によって冬眠できない個体が出てくるということで、ヒグマ自体の生息数増加や、気候の変動でヒグマの食料不足が加速→冬季に活動する個体の増加という事も考えられます。
さらに気温が上昇するとヒグマの冬眠期間が短縮されるという研究結果もあるため、今後平均気温の上昇により、3月の春スキーシーズンに冬眠明けのヒグマの活動が活発になるなんて事もあり得ます。
以上の事例や研究結果などを考えると、近い将来スキー場がヒグマ対策を迫られるのも決して絵空事ではないのかなと思います。猛獣であるヒグマとの共生はとても難しいテーマではありますが、ヒグマに怯えながらスノーボードする未来も、隔離された施設で日本産最後のヒグマ数頭を飼育なんて未来も、どっちも来てほしくないものです。